2012年2月4日土曜日

京都市交響楽団(3)         京都市は職員の犯罪や不祥事が極めて多い

4月はじめの1週間は、まず資料に目を通そうと思った。特に財務関係の諸表は見ておきたかった。また、楽員の勤務条件やシフトがどうなっているのかも知りたかった。私はオーケストラでマネージャーとして働くのであれば、できるだけ音楽的レベルの向上を図れるような条件を考えつつ、経営の改善につなげていきたいと考えていた。それは18年前に高崎でオーケストラアンサンブル金沢の経営について質問した時と変わっていなかった。オーケストラの経営改善は賃金カットや人減らしではなく、定期会員や依頼演奏会の増加、公演全般のチケット売り上げの増加によって行えるはずだというのが私の信念である。その為にはまず魅力的なプログラム作り、指揮者やソリスト、そして合理的なシフトによって練習の質を高めることが何よりである。

しかし、早くもはじめの1週間で次のようなことがわかってきた。まず、バランスシートは内外共に公表されていない。予算書は「人件費を除いた」大雑把な収入、支出が公表されているだけであり、それ以上は内部の人間でも閲覧できない。また、マーケティングリサーチは過去に行われたことがない。演奏会の際に何度もアンケートが行われているが、例えばどの年齢層がどの地域からどの演奏会に来たのかや、定期会員の年齢や性別、居住地域などによる分布は集計も電子化もされていない。広告も、どのような媒体にいつ、どれだけ露出し、その結果どれだけ集客に結びついたのかを集計したデータは作られていない(あるいはデータが取られていない)。

過去のデータの中で唯一電子化されていたのは、創立以来の演奏曲目などプログラムとライブラリーの関係だけだった。アンケートなどはすべてファイリングされて紙データで保管され、集計されて電子化されているのは一部だけだが、毎回アンケートの形式が違うので統計としてはまったり利用不可能な物だった。

数日すると「ジュニアオーケストラのオーディション」というのがあったが、参加したのは数人だけだった。一応業務として行われているはずなのに、かなり酒臭い人がいた。聞けば花見からそのまま直行したらしいが、あまり感心できるはなしではない。私は特に何も言わなかったが、資料を閲覧するうち練習に酒を飲んで出勤したメンバーの問題などが指摘されており(そのメンバーは早期退職したが)問題意識が低いのではないかと感じられた。また、楽器庫や楽器の保管場所が整備されておらず、私物と団の楽器の管理がきちんとされていない事もわかった。山台周辺などにケースが大量に置いたままになっており、打楽器の保管場所も不足していた。あろうことか、過去には団所有の楽器を勝手に売却した人もいたそうだが、その人も処分など受けず、自ら早期退職したということだった。

京都市は職員の犯罪や不祥事が極めて多いと言うことも、京都市交響楽団に赴任してから初めて聞いた。また、刑事罰を受けても解雇されない職員が多いと言うことも聞いて、驚いた。

さて、そうこうするうちに初めてのリハーサルの日がやってきた。私はリハーサルを聴けることも、広上氏と会えるのも楽しみにしていた。4月のはじめなのに汗ばむような陽気だった。練習は午後3時半からだった。指揮者の控え室には飲み物が用意されていたが、何もお茶請けがないのに気がついて、私は昼休みに出町までいって出町双葉の豆餅を買ってきておいた(もちろん自腹で)。新年度初めての練習だし、通常指揮者は早めに控え室に入る物なので、少しは会話ができるかと待ち構えていたが、広上氏は練習開始の15分前まで現れなかった。しかも、広上氏が現れるや財団幹部から新旧事務局長まで、役員が勢揃いして一人二人ずつ控え室に入って挨拶をし、私は後列に待たされて一言紹介を受けただけだった。広上氏は自分だけ座ったままでうなずいているだけだった。私は「お茶請を買っておきましたから召し上がって下さい」と言うのがやっとだった。

その直後、信じられないことが起こった。広上氏は立ち上がって豆餅の包みを持ち上げると、離任する藤田係長に渡し「これ、あんたにやるよ。毒が入っているから」。そう言って練習場に向かっていったのだった。

(続く)

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