2018年8月25日土曜日

ヨーロッパのインターナショナルスクールについて(6)

その年の春、このインターナショナルスクールの初代学長を開学直前に解任されたヨルゲン・Kが、オーストリアのニュース雑誌「News」に寄稿した記事によれば、ニュージーランドの億万長者リチャード・Cとウィーンの開発業者は共同で、19世紀に建てられた歴史的にも有名な医師の名を冠する保存文化財の建物の中にあり、美しい緑の公園に囲まれた本来は1億ユーロ以上の価値のある6棟のパビリオンのうち3棟を、「最低でも15年間学校として使用する」ことを条件にこの物件をウィーン市から1420万ユーロ購入し、この「エリート音楽家育成のための」新しいインターナショナルスクールの設立を計画したと言うものだった。

リチャード・Cはロシアのオリガルヒのマネー・ロンダリングを引き受け、インターナショナルスクールはただの隠れ蓑に過ぎず、15年経過後にはこのパビリオンを超高級住宅として転売して膨大な利益を出そうとしているというのである。

学長を解任されたヨルゲン・Kはもちろん、当時の経営陣に極度に批判的であり、これが事実かどうかは私には確かめようもなかった。しかし、音楽学校の経営にはほとんど素人としか言えないドイツの運営会社(しかも本社の所在地はロンドンとなっている)が極めて付け焼き刃で人選もきちんと行わず、膨大な予算を湯水のように浪費して、学校としてはまだまったく成果の出ていない音楽学校を経営している様は、私には異様にしか見えず、この記事がまったくのガセネタだとは言い切れないのであった。

2013年4月、ウィーンに戻った後私は校長代行であったクルト・Bと話し合いを持って、この記事について率直に質問したが、校長の答えは「本校は地上げなどとは何の関係もない」とのことだった。そして、クルト・Bはその後の生徒募集についても積極的に行ってほしいと熱心に要請してきた。日本からの生徒は是非増やしていきたいとの考えだとのことだった。