2015年10月22日木曜日

日本の音大に行くべきではない理由   (その4)

4.日本の音楽大学の先輩後輩の関係は一生続く。

私は本来音大に行くつもりがなく、1浪したあとで音大に行くことに進路変更して音大に入ったので(音大には浪人せずに入れた)同級生より2つ年上、入学時に現役で入った3年生と同じ年だった。音大に入ってまず真っ先に違和感を感じたことは、どこで欠礼したとかそういったことですぐに呼び出されたり注意されることだ。学内を歩いている時はいつもきょろきょろして先輩に欠礼しないように注意していなくてはならないし、練習棟で練習していても先輩が通りかかる度に挨拶しなくてはならないから練習に集中できない。

私は3年生と同じ年なのに欠礼の度に呼び出されるのが不満で、担当教官に苦情を言ったことがある。その際の答えは「年が同じでもより多くの経験を積んでいる先輩なのだから、敬語を使い、先輩として敬うべきである」というものだった。社会人を経験してから音大に来たり、他の大学を出てから音大に入った人にもそれぞれの経験があると思うが。

凄まじい新歓コンパやハラスメント、ヘイジングのことは過去のブログに書いたので繰り返さないが、少なくとも私の時代の音大において先輩の言うことは絶対であって、逆らうことは許されなかった(飲酒の強要は2010年頃まで、様々なハラスメントはいまでも続いていると聞いているので、先輩絶対の雰囲気は今でもさほど変わらないのだと思う)。

そして、その上下関係は基本的に卒業後もずっと続くことになる。先輩であった人には何となく遠慮しなくてはならないし、考えが異なっても反論しにくい雰囲気はずっと続く。

ウィーン国立音楽大学では、学生同士はどんなに年が違ってもDuで呼び合う。2012年に古楽科に通うようになった時も30以上年が違う学生ともすぐDuで話す(たまに私が先生だと思ってSieで話しかけてくる学生はいたが)。中には先生でもお互いDuで話す人もいる。クルト・レーデル先生がザルツブルク・モーツアルテウムの教授になったのが19歳であったことを考えると、あながち不自然でもない。

私は日本の音大を出て、もう何十年も経ったプロのプレーヤーが自分より入学年が早いというだけで上級生だった人はいつまでも「〜さん」で、同級生以下は呼び捨てにすることにもいまだに違和感を感じざるを得ない。もちろん、価値観は人それぞれだ。しかし、もしそういう上下関係を一生引きずりたくないと考えるなら、日本の音大に行かなければそれですむ。誰とも先輩にも、後輩にもならないですむ。

2 件のコメント:

  1. 先輩後輩の関係、結局は人と人の繋がりです。
    嫌なことを押しつける先輩もいれば、面倒なことは請け負ってくれる優しい先輩もいます。大人になって社会に出たら、つきあいが深くなるのはよい人間関係のところでしょう。

    最近は、音大にいかずに音楽を続けようっていう人が増えています。大人になって、いろいろやりたい!と相談されます。でも、アンサンブル組むにしても、何か企画をするにしても、力になってくれる友達、先輩後輩がいない。

    人間関係は、音大の最も大きなメリットです。

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  2. 人間関係が大事なのは洋の東西を問いませんが、一度固定してしまった上下関係が一生続くのは良いことだとは思いません。海外の音大なら「友達」ばかりで「先輩・後輩」はありません(そもそもそういう言葉や概念がありません、私より年上の学生、というくらいですし「先輩の命令だから絶対」みたいなことは全く通用しません)。「友達」は何歳年が違っても対等な関係です。

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